pas~(パ~)
~ ・・ではありません ~
「c'est」が出たところで,これを打ち消す否定の表現「pas(パ)」も覚えておきましょう。これは本来,「ne ~ pas」という2つの言葉を使った否定の表現です。きちんとした構文で使う際には,動詞の前に打ち消しを表す「ne(ヌ)」を,そしてこれを補う形で,動詞の後ろに「pas(パ)」を添えます。たとえば,前出の「C'est le stylo.」という表現を否定文に変えると,「Ce n'est pas le stylo.(ス・ネ・パ・ル・スティロ)」となるわけです。この場合,動詞である「est」を「ne」と「pas」で挟み込んで打ち消しているのです。日本でも古語では,このように「な~そ」というような打ち消し表現がありましたが,それと似ていますね。
ただし,否定にいちいち2つの語を使うのは面倒くさいものです。そこで,現代のフランス語では,「ne」を省いて,「pas」だけで否定を表現することが多々あります。ですから,「Ce n'est pas le stylo.」が「C'est pas le stylo.(セ・パ・ル・スティロ)」と短くいわれることもしばしばです。
さらに,会話などでは「c'est」すら省いて,「Pas le stylo(パ・ル・スティロ)」とだけいわれたりします。とにかく,「pas」がついたら否定の意味なんだということだけは覚えておいてください。旅行中に何かを訪ねて,「パ~!」といわれたら,「~ではない」ということになります。
ちょっと話はそれますが,ここで使われている「pas」は,元々「一歩」というような意味の名詞です。それがどうして否定の意味になったのでしょう。
ラテン語系の打ち消し表現はもともと「no(ノ)」です。英語では「not」となり,イタリア語でもスペイン語でも打ち消しには「no」あるいは「non(ノン)」を使います。これがフランス語では「ne(ヌ)」となっているわけですが,「ヌ」だけでは音が弱く,否定の意味が伝わりづらいため,いつしかそのあとに「pas(パ)」がつくようになったらしいのです。つまり元々は,「ne~pas」で「一歩も~ない」という意味が転じて,「少しも~ない」ということになったらしいのですが,それがいまでは「ne」までが脱落して,否定は「pas」だけになってきています。元々は違う意味だったものが,いつしか否定の意味を表す言葉になっているとは,なんとも皮肉な感じがしますね。
関連語句 ne(ヌ):否定を表す助詞, pas:(パ):一歩,歩幅, stylo(スティロ):ペン(男)
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