tu/vous(テュ・ヴ)
~ 君/あなた ~
フランス語をはじめ、イタリア語・スペイン語などのロマンス語諸語には、2人称に2通りの言い方が存在します。1つは、親しい間柄で使用する「君」というような意味の2人称、もう1つは、かしこまった感じのフォーマルな言い方である「あなた・そちら」というような意味の2人称です。フランス語では前者のくだけた2人称を「tu(テュ)」、後者のフォーマルな言い方を「vous(ヴ)」で表しますが、この「vous」は基本的には、2人称複数(君たち)を表す代名詞なので、活用的には少しイレギュラーな使い方となります。ここでもう一度、人称代名詞の活用をおさらいしてみましょう。
| 人称/単数・複数 | 単数形 | 複数形 |
| 1人称 | je(ジュ:私) | nous(ヌ:私たち) |
| 2人称 | tu(テュ:君) | vous(ヴ:君たち、あなた) |
| 3人称 | il/elle(イル:彼/エル:彼女) | ils(イル:彼ら・彼女ら) |
このように、「vous」は本来2人称複数形の人称代名詞ですが、少しかしこまった言い方である「あなた」というような言い方の場合は、2人称単数でも「vous」を使用します。当然ながら、動詞の活用も2人称複数形で活用するので、注意してください。たとえば、「お元気ですか?」を意味する「Comment allez-vous?」(コマンタレヴ?)は、vousを主語に取った「あなたはお元気ですか?」という言い方ですが、これをややくだけた感じの「tu」を主語にすると、「Comment vas-tu?」(コマンヴァテュ?)と言い方も全く異なってきます。そういう意味では、動詞の活用をある程度理解していないと、なかなか使い分けるのは難しいのですが、大抵の動詞は「tu」を主語に取る場合は「-as(ア)」、vousを主語に取る場合は「-ez(エ)」で終わるので、慣れればそれほど難しいことはありません。
文法的には2人称の単数形と複数形を使い分ければ済む話なのですが、意外と分からないのは、「tu」と「vous」を一体どの辺で使い分ければよいのかという点です。一般に、「vous」は敬語とされているので、敬語の使用が多い日本人にとっては、「vous」で相手に呼びかけた方が無難というイメージがあります。確かに、初対面の人や目上の人、会社などでの商談やおつきあいといったシチュエーションでは「vous」を使うべきでしょう。アメリカと違って、フランスでは初めからあまりくだけた感じで話をするのは御法度ですから、こうしたフォーマルなシチュエーションでは、「vous」を使います。しかし、2度3度と会うにつれ、相手とだんだん親しくなってきたら、あまり「vous」ばかりで話しかけるのも、逆に親しみがないようなイメージを持たれてしまい逆効果です。たとえば、相手に対して友達のような感覚を持ってきた場合や、毎日顔を合わせるような関係になってきた場合には、思い切って「tu」で話しかけてみると、その後のお付き合いも、より親しみが増すというものです(なんといっても、「tu」のほうが動詞の活用が短くて楽なのです)。
ただし、相手に対して「tu」を使う場合には、あらかじめ「Est-ce que je peux tutoyer?(エスク・ジュプ・テュトワイエ?:tuで呼びかけていいですか?)」、「On pourrait se tutoyer?(オン・プレ・ス・テュトワイエ?:tuで呼び合いませんか?)」 など一声かけておくようにしましょう。あるいは、相手の方から「tu」で話してください、と言われることもあるかもしれません。目上の人に対しては、相手から「tu」で呼びかけられたら、それに対して「tu」を使うようにすればよいでしょう。ちなみに「tutoyer(テュトワイエ)」は、「tu」で呼びかけるという意味の動詞、「vouvoyer(ヴヴォワイエ)」は「vous」で呼びかけるという意味の動詞です。
関連語句 Comment allez-vous?(コマンタレヴ?):お元気ですか?, Comment vas-tu?(コマンヴァテュ?):元気?,peux、pourrait(<pouvoir)(プーヴォワール):できる, tutoyer(テュトワイエ):「tu」で呼びかける, vouvoyer(ヴヴォワイエ):「vous」で呼びかける
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